【書評】創造都市への挑戦 産業と文化が息づく街へ

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書評
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図書コーナーに置いてある本を、スタッフ目線で書評(ブックレビュー)します。様々な本を取り揃えておりますので、ご興味ありましたらコモンルーム中津まで!ビジター利用は90分500円から、予約不要でご利用いただけます。7/22(水)13:00~「帰ってきた!読書の日!」のイベントを開催します!どうぞ、お気軽にお越しください!

「創造都市への挑戦 産業と文化が息づく街へ」 著者:佐々木雅幸

スタッフの谷口です。今回の書評は、私にとって心持ちがいつもと少々異なります。この本の著者、佐々木雅幸先生とはシンポジウムなどで何回かお話を拝聴し、ご挨拶もさせていただきました。創造都市研究では日本の第一人者。研究者(実は某国立大学大学院の博士前期課程を出ております)としても、現場の人間(ここ以外ではアートマネージャー/コーディネーターとしても働いています)としてもぺーぺーの私が書評なんで恐れ多い!のですが、この機会に挑戦します!

では、はじまり、はじまり。

第一章 「都市の世紀」幕開け

第一章は「そもそも創造都市って何ぞや?」というところを歴史や理論的な系譜を踏まえて説明しています。佐々木先生の言葉を引用すると「創造都市とは人間の創造活動の自由な発揮に基づいて、文化や産業における創造性を富み、同時に、脱大量生産の革新的で柔軟な都市経済システムを備えた都市であり、「二十一世紀に人類が直面するグローバルな環境問題やローカルな地域社会の課題に対して、創造的問題解決を行えるような『創造の場』に富んだ都市ということです。

ん・・・?!今、頭の中に?がたくさん・・・。

私なりにめっちゃ噛み砕いてみると、「個々(住民・その街で働いている方々・来訪者など)の何かを創り出す力が存分に発揮して都市の経済に活用できたら、柔軟なシステムになるんちゃう!」ということ。そして、「その創りだす力が都市の抱える課題を違った目線で解決への糸口を見つけられるちゃう!」ということです。

第二章 創造都市・ボローニャへの招待

第二章と、第三章はイタリアのボローニャ、石川県金沢市を創造都市の具体的な事例として取り上げています。

なぜイタリアの中でもボローニャなのか?1990年当時国家破たんとまで言われたイタリアが、2000年には財政再建の成果を上げました。ボローニャを手本に「地域の力」を引き出す形で、公共事業の削減や福祉サービスの一部を民営化を進めたのです。この章で私が気になったのは「演劇協同組合」。協同組合方式。ほうほう、私自身は初めて聞きました。こういう方式。

今回取り上げられているのはヌォーヴァ・シェーネという組織。他の都市では行政が過度に入り込んだことで、運営が硬直化したり、演目が一辺倒になったそう。自由度のある新しい組織の在り方を模索した結果、協同組合方式に辿りついたとのこと。この方式を取り入れたことにより、経営者と従業員のような上下関係がなく、公平な作業分担利益分配相互秩助の理念が根付いています。行政だけではなく劇場や学校とも提携。組織や共同体としてこの分野では日本であまりない形です。

第三章 内発的創造都市をめざす金沢

冒頭にもありますが、発行は2001年なので、調査はその前。2015年春に開通した北陸新幹線、2004年秋に開館した金沢21世紀美術館も開館前です。

この章で書いてあるのは、都心再生をはかる新交通システム、伝統文化の高揚と魅力ある都市景観の形成及び新文化の創造、コミュニティの再生による住民が住みやすい環境づくりの三点。書籍の内容に沿いつつ、私もよく金沢を訪れるので今の視点を混ぜてご紹介!

金沢は多数の伝統的な工芸が発展。加賀金箔、加賀友禅、九谷焼、加賀繍などなど。金沢21世紀美術館には加賀友禅の柄からイメージを受けた作品が常設展示されたり、JR金沢駅新幹線ホームの柱には金箔、駅舎のコンコースには金沢周辺の伝統工芸がデザインに取り入れられています。伝統工芸で問題になっているのは「後継者」。現在、NHKの朝ドラでも伝統工芸を継ぐ若者も登場します。金沢は伝統工芸や物づくりを学べる公私の大学や専門学校が充実。市内のおしゃれなギャラリーに行くと取り扱っている作家は近隣の学校出身が多いです。行政もですが、民間でも保存しようと努力をする熱が高いのです。

第四章 創造都市への多様なアプローチ

さて、この著書が出てから大きく変わったことがあります。2004年にユネスコが「創造都市ネットワーク」というプロジェクトを立ち上げました。文学・映画・音楽・工芸・デザイン・メディアアート・食文化の7つの分野の創造産業で世界の中でも特色のある都市が認定されています。金沢は工芸で、ボローニャは音楽で既に認定済み。日本版のHPはこちら:http://ccn-j.net

第四章では、都市ごとの多様なアプローチの方法を、第五章では都市の中のケースに焦点を当て創造都市の大きなうねりにつながる萌芽とまとめをそれぞれ扱っています。

私は浜松市の事例に注目。佐々木先生のお話を伺った直近のシンポジウムは、今春に浜松市で開催されました。昔から大手楽器メーカーのお膝元であり、楽器作りの盛んな都市。浜松駅そばのアクトシティという施設内にある楽器博物館にも立ち寄ったのですが、たまたまある広告を見ました。それは世界的なピアニストやヴァイオリンニストを講師に招き、浜松市内の子どもから国内や世界中の若手演奏者のレッスンを行うというものでした。この事例は第四章にも記載がありました。市民オペラも実施され、市民参加型・そして文化発展のための育成を継続的におこなう気風が根付いています。

第五章 産業と文化と「創造の場」をつくる四つの現場から

創造都市が目指すところは「誰もが創造的に生き、仕事ができる地域」です。ではこの条件を満たすには何が必要でしょうか?

①自己の能力を発揮できるとともに、自己改革能力に富んだ地域経済システム(何かあれば地域で改革ができる柔軟なシステム)

②研究機関、文化施設が整備され、中小・職人企業の権利を擁護し、創造的な仕事を支援する各種協同組合や協会などの非営利セクターが充実・機能(土台作りや育成・保存と同時に、新しいことを始めやすいようにお金や人などの支援が充実)

③生産と消費のバランスのとれた発展

④地域住民の創造力と、完成を高める景観の美しさを備えている

⑤狭域自治(地域にある自治会など)と広域の行政のシステム

⑥創造的自治行政を支える財政自主権、政策形成能力の高い自治体職員(執行や支援がスムーズに行えると同時に。理解と実行力の伴う職員が大事)

ふむふむ…。なかなかハードルが高いですが…。システムや施設などのハードとともに、人材などのソフトも同様に大切ということ、また一緒に協働できる繋がりが重要!ということです。

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